こんにちは!ゼロアートのMickeyです。
今回は、ルネサンス美術様式に続く、「マニエリスム」について、ご紹介します。
【参考記事】
目次
1、マニエリスムとは?3Pで概観する!
ティントレット「最後の晩餐」(1592-1594)油彩、365 × 568 cm、サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会
マニエリスムを3つのPの観点から整理すると以下の通りです;
◆Period(When?)
16世紀(1520年代〜1580年代)
◆Place(Where?)
イタリア
◆People(Who?)&◆Piece(What?)
ティントレット
・最後の晩餐(1594)、サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会・ヴェネチア
エルグレコ
・受胎告知(托身)(1596-1600年頃)、プラド美術館
・第五の封印(1608-1614)、 メトロポリタン美術館・NY
ブロンズィーノ
・愛の寓意(1540年-45年)、ナショナルギャラリー・ロンドン
パルミジャニーノ
・長い首の聖母(1534 – 1540年)、ウフィツィ美術館・フィレンツェ
ジュゼッペ・アルチンボルド
・『冬』(1573)、ルーヴル美術館、パリ
以上がマニエリスムの4Pとなります。
2、マニエリスムの特徴とは?
では、マニエリスムとはどのような特徴がある美術様式なのでしょうか?
結論から言えば、
「それまでの美術の描き方のルールから逸脱した描き方で表現された美術」
です。
ルネサンスは、ダ・ヴィンチやミケランジェロによって、「完成された美」という境地に到達しました。
この作風に対して、
極端な歪曲や、人物の手足の長さを強調したりする、
「自然には沿わない描き方」
を行うようになっていったのが、このマニエリスムです。
もともとこのマニエリスムという言葉は、イタリア語で、
「マニエラ(手法・様式)」
の意味から来ており、ルネサンスの巨匠たちの「真似」や「模倣」にすぎないという批判的な言葉として用いられていました。
自身もマニエリスムの画家として活躍し、「美術家列伝」の著者として有名なジョルジョ・ヴァザーリは、マニエリスムについて、
「自然を凌駕する芸術的手法」
という意味を与えました。
当初は歴史的な評価は高くなかったマニエリスムですが、
20世紀に入って再評価され始めていたエルグレコなどの影響もあり、
マニエリスムのその独特な表現技法が評価され現在に至っています。
3、A-PEST分析でわかる!マニエリスムはどのようにして生まれたのか?
このマニエリスムの誕生の背景ですが、以下の4つの観点から分析して挙げてみましょう;
1、Politics:政治的背景
当時のイタリアは、統一国家ではなく、小国分立の時代です。
そして、16世紀は、このイタリア半島をめぐり、フランスと神聖ローマ帝国による「イタリア戦争」が勃発していた戦乱の世紀でもあります。
1559年には、スペインを最盛期へと導いたフェリペ2世が、カトー=カンブレジ条約でイタリア戦争を終結させます。フランスをイタリアから撤退させ、イタリアに対するスペイン=ハプスブルク家の支配を強めることになりました。
従って、イタリア戦争終結後は、スペインによるイタリア支配が進みました。
これに伴い、イタリア・ルネサンスは終焉を迎えます。
2、Economics:経済的背景
そのような状況の元、ポルトガルやスペインが大航海時代を主導します。
これにより、地中海を中心に貿易で潤っていたヴェネチア等をはじめとするイタリアから、貿易の中心が移っていき、イタリアは経済的にも衰退していきます。
3、Society:社会的背景
大まかに、貴族階級と、商人、そして、労働者階級(細民)に分類されます。
戦乱の世に社会は混乱。経済的衰退も手伝って、社会状況は停滞していきます。
4、Technology:技術革新の背景
ルネサンスの三大発明等を基盤として、「科学革命」へと繋がっていきます。
すなわち、コペルニクスやガリレオ、ケプラーなど「科学的なアプローチ」が発達し始めていった時期です。
これらを可能にしたのは、16世紀の後半〜発明された顕微鏡、望遠鏡などの「観測するための機器」が大きな影響を与えました。
以上のような背景から、ART(美術)は、
「これまでのルールや規範を超えた形での描写 」
というマニエリスムの特徴に繋がっていきました。
つまり、ダヴィンチやミケランジェロ、ラファエロが完成させてしまった「ルネサンス」という美術の到達点に対して、非対称的な構成や不自然な優美さなどを強調した美術様式を生み出していきました。
イタリアの「文化的」「経済的」衰退が、マニエリスムという「不自然な美」という「恐怖や不安」を反映したような表現を生み出したと言えるのではないでしょうか。
以上、マニエリスムの概要でした。
いかがでしたでしょうか?
次回は、バロック美術についてご紹介します。