ゼロアートのMickeyです。
今日は美術鑑賞について、その楽しむためのポイントを4つの観点からご紹介します。
例えば、
・「美術鑑賞は難しいから苦手」
・「美術鑑賞しても、意味がない」
・「美術は一握りの人のためのもの」
このようなイメージを持っている人も多いかと思います。
一方で、最近は「美術鑑賞ブーム」とも言えるような流れが出てきていて、
「美術を鑑賞したい」と思い始めている人も多くなってきているように思います。
私も以前は、美術鑑賞に興味はあったものの、「深く見ること」ができず、
表面的な解釈に止まっていました。
当時を振り返って思うのは、「苦手」なのは「知らなかったから」という言葉に尽きます。
では、「知る」ためにはどうしたらよいか?
シンプルに言えば、「知るポイント」を理解すればよいのです。
そして、
そのポイントは、「4つのP」を意識すると良い!と思っています。
本日は、私が書籍の中でも示している「3つのP」にPieceを加えた「4つのP」について、
改めてご紹介していきたいと思います。
1、時代を知る Period
最初のポイントは、「時代=Period」を知る、ということです。
過去の名画をはじめとする美術作品を難しく感じてしまう理由のひとつは、
「生きている時代背景が違う」という点です。
例えば、私たちにとって「電気がある生活」は当たり前ですが、
実は電気がある生活が当たり前になったのは、つい最近のことです。
電球を発明したのはエジソンですが、その発明は1879年に遡ります。
たった150年ほど前です。
これ以降、家庭に「電気」が普及されはじめます。
つまり、逆に言えば、19世紀以前は、「電気すらない生活」をしていたわけです。
この時代と同時期で、
私たちが馴染みのある美術のひとつが「印象派」ですが、
この印象派は、1874年に生まれました。
つまり、このころは家庭に電球すらなかったのです。
また、このころからようやく「写真」が人々の間に普及していきました。
この写真の普及が、絵画の「肖像画需要」を奪っていったことによって、
印象派という「自分が見た世界」を描くことに繋がっていくことになりました。
このように、作品を鑑賞する際に「タイムスリップ」することによって、
時代の空気を追体験しながら、「美術作品を感じる」ことによって、
「なぜその作品が歴史に残っているのか」を読み解いていくこと。
これが楽しむコツのひとつになります。
逆に言えば、21世紀の視点から見れば、当時の作品の「何がすごいのかわからない」と思ってしまうこともしばしばですが、
逆に、
「歴史に残る作品とは、なぜその価値を時空を超えて、評価されているのか?」
という問いを立て、「時代=Period」という視点からそれを解き明かすことが、
「楽しむコツ」になるのです。
2、場所について知る Place
2つ目は「場所」です。
「どこで生まれたのか?」という観点になります。
時代を知っていくと同時に、この「場所」を見ていくことが不可欠となります。
もう少しかみくだいた言い方をすれば、その作品はどの「土俵」や「土地」「舞台」で制作されたのか、というポイントを見ていきます。
例えば、「ルネサンス」という誰もが知っている美術が繁栄したムーブメントは、
イタリアのフィレンツェという場所を抜きにして語れません。
「なぜこの場所で、ルネサンスが生まれたのか?」
という場所に着目をして、背景を読み解くことで、ダ・ヴィンチやミケランジェロといった傑出したアーティストが生まれた理由がわかっていきます。
そして、その理由を探っていくことで、実際に実物を鑑賞することが、
「大きな感動」へと繋がっていくのです。
従って、このような場所の特性やその土地でどのようにして作品が誕生したかといった背景等について探っていくことが、
美術鑑賞を楽しむ上で押さえるべきポイントになります。
特に絵画について言えば、
イタリア、フランスに加え、オランダ、スペイン等、そして、現代であればアメリカが押さえておくべき場所となります。
従って、これらの「国の状況や美術の移り変わりの流れ」を押さえることができれば、
美術鑑賞をさらに楽しむことができるようになります。
3、人について知る People
3つ目が、「人:People」です。
「天:Period」、「地:Place」という「マクロ」に対して、ミクロな見方になります。
作品を生み出すのは、人。
Artとは、Artificial=人工的、なものです。
時にその人工物「ART」が、自然の美しい光景や、偶然の産物等に出会った瞬間と同じくらいの感動を与えてくれることがあります。
この感動という瞬間を創造できる「人」を理解せずして、作品を鑑賞することは、片手落ちになります。
例えば、アーティストの中でもっとも有名といっても過言ではないのが、
「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ」です。
ゴッホといえば、「耳切り事件!」というイメージでしょうか?
もしくは、「精神的に病んでいる」という人物像でしょうか?
そういった「イメージ」ができているアーティストというのは、作品の鑑賞の仕方も、
「精神的におかしい人が描く絵!」という「見方」になっていきます。
良いか悪いかは置いておいたとしても、
このように、「見方」に反映されていきます。
そして、このような有名なエピソードがあるかどうか、というのも、その作品が評価される「ストーリー」という名のブランドを高める要因にもなります。
従って、美術鑑賞を行う上で、この「人物を理解すること」は、
私たちが美術鑑賞を楽しめるかどうかにも、大きく左右するのです。
特に、アーティストという人種は、何か特別な能力や個性を持っていると捉えられがちです。
そして、現にそのような「特殊性」をはらんでいることがほとんどです。
ですので、
そのような側面を探っていくことも、非常に面白い「旅」となり、
作品を鑑賞していく楽しみが増えていくのです。
4、作品について知る Piece
さて、以上の3つのPを踏まえた上で、最後のPが「作品:Piece」です。
例えば、「モナ・リザ」ならば、
・「このモナ・リザという絵は、フランスのルーブル美術館で鑑賞できるんだよ!」
・「ダ・ヴィンチというアーティストは死ぬまでこの作品を手放さなかったんだよ!」
・「モデルが誰かわからないんだよ!」
・・・
といった「豆知識」や「トリビア」的なものを「少しずつつまんで」知っていることも多いかと思います。
これはこれで楽しいのですが、「なんで?」「どうしてそうなったの?」「どこが優れているの?」といった「5W1H」等の深い問いに対しては、あまり役立ちません。
また、このようなトリビアだけで絵画を見ている状態というのは、クイズ番組に出る際には役立つかもしれませんが、それ以上の「美術鑑賞の効能」を得ることはできません。
それは、私たちが今体験している「不確実性が高い時代」において、特に顕著です。
従って、作品を鑑賞して、それらを「自分の人生に生かす」という点において重要なのが、
前述した「3P」という観点から得た「深さ」であり、それらを踏まえた上で、
「作品:Piece」をつぶさに観察していく(Observe)ことで得られる
「作品への気づき」です。
実は、作品を「つぶさに観察する」ということは、思っている以上に、難しいことです。
「え?なぜ?私は観察できてるよ!」
と思うかもしれませんが、実際にこれをやってみるとそれを実感できます。
例えば、かの有名な古代ローマの英雄「ユリウス・カエサル」も、
人間ならば誰にでも、現実の全てが見えるわけではない。多くの人たちは、見たいと欲する現実しか見ていない
という名言を残しています。
他には、だまし絵という「トリックの絵」を見たことがある方も多いかと思いますが、
これらは「人間は事物を見たいように見ている」という事実を表す最も良い例かもしれません。
「漏れなく、自分が見たいもの以外のものも含めて作品を観察する」
実際に私が行っているセミナーでも、
ひとつの絵を見ながらグループで議論したりするのですが、
「見方の多様さ」に驚かされることがあります。
ですので、最初は「作品を観察するポイント」について知り、これを意識的に行っていくことにより、「観察」ができるようになっていきます。
その結果、「作品から見いだせる力」がアップし、「読み解ける質量が大きくなる」という「レベルアップ」がおきます。
この状態が「美術を楽しめている状態」です。
余談ですが、最近は「PDCA」というビジネス改善のためのフレームワークに代わり、
「OODAループ」という仕事の進め方が注目され始めています。
このOODAの最初の「O」が「Observe」つまり「観察」になります。
このループは、「観察力が起点」となっていることにより、その重要性がわかるかと思うのですが、
この観察の仕方によって、アクションが大きく変わり、成果も変わっていくということになります。
つまり、美術に話を戻すと、一つの作品から観察できることが増えるほどに、
想像できる幅が広がり、想定できる物事が増え、
その分、「美術を楽しむことができる幅がひろがる」とも言い換えられます。
*
以上4つの観点から美術鑑賞のポイントを見てきました。
これらができるようになることにより、美術鑑賞が深みを増し、
「楽しいな!」と思える瞬間が増えてくるのです。
そして、この4つの視点を行き来できるようになると、
「一枚の絵を通じて、当時の時代背景までを見通すことができる」
と言い換えられます。これが美術鑑賞の醍醐味でもあります。
つまり、2次元の作品を通じて、3次元、4次元まで世界を見通す。
このようなことが可能になります。
これは、「静止画」だった作品が、「動画」となり、私たちに与える感動を増やしてくれるということにもなります。
そのような状態こそが、「教養を身につけている状態」
ともいえ、
「人が目指すべき、ひとつの状態」なのではないかと、個人的に思っています。
このような状態を実現できた結果、「おまけとして」、
私たちは「生きる術」として美術を活用することができるようになります。
人間は、完全には、未来を見通して生きていくことはできません。
従って、学ぶべきは「過去」にあり、その過去をどのように捉え、未来に生かしていくか。
この大きなヒントが「美術」にあり、そして、この美術こそが、これからのVUCAワールドという激しい荒波を泳ぎ、サバイブしていくための「羅針盤」になるのです。
今回は、詳しい読み解きの方法についてはご紹介しませんでしたが、
ZERO ART主宰堀越の著書「論理的美術鑑賞」の中でケーススタディーなどを行っていますので、
ご興味ある方はぜひ以下よりお手にとって見ていただけたら幸いです。